オーダーの流れ
1度目のご来店
御注文
何事も最初が肝心です。店頭にてお仕事、趣味、ライフスタイル等、お客様とゆっくりお話させていただきたく思います。
ご注文いただける場合、まずはベースとなるデザインを決めていただきます。(細かなディティールは仮縫い時に決めることもできます。)
次に、生地を選んでいただきます。弊店では各シーズン、最新生地バンチをご用意しております。
種類がかなりの量になりますので、前もってご希望の色柄などご連絡いただければ、お客様のご来店にあわせ事前に準備させていただきます。
最後に3Dスキャン(採寸)です。3Dスキャナーを使ってお客様の詳細な体型情報を取らせていただきます。これにより、より正確な型紙作成が可能になります。詳しくは後述の「デジタルフィッティングについて」をご覧いただければと存じます。
2度目のご来店
仮縫い
お客様には、まずシルエットを見ていただきます。また、着用感に関し2、3の質問をさせていただきますが、ご遠慮なさらず感じたままお答え下さい。
率直なご意見は、今後の補正方法を決定するため、非常に重要です。少しでも気になることがあれば、仰ってください。
仮縫いの様子は映像に撮り、すぐに可視化できるようにしています。お客様は鏡で見た前からのお姿だけでなく、自分の後ろ姿もご確認いただけます。
必要であれば、となりの工房ですぐに修正し、再度フィッティングの確認をさせていただきます。少々お時間を頂きますが、ご協力をお願いいたします。
※フィッティングを行うにあたり、可能であればサイズの合ったシャツ、革靴のスタイルでご来店下さい。
3度目のご来店
中縫い
まずは、仮縫いと同じ要領で再度シルエット、着用感をご確認していただきます。
前回との違いを、この時点で体感していただけるはずです。もちろん気になるところは、どんな些細なことでも仰ってください。
中縫いでは、襟の返り具合、幅、ゴージラインのイメージ等、前回よりもさらに細かい点をお伺いし、出来上がりの最終確認をさせて頂きます。
※Buonoでのご注文の場合、中縫いはございません。
4度目のご来店
お渡し
可能であれば、合わせることを想定したシャツ、ネクタイ、革靴のスタイルでご来店いただければと思います。
完成したご注文品をご試着していただき、お客様と共にフィッティングの確認をさせていただきます。特に問題がないようでしたら納品となります。
デジタルフィッティングについて
Ypsilon Coutureは、3Dスキャナーを活用した型紙製作技術「デジタルフィッティングテクノロジー」を開発しました。初回来店時に3Dスキャンを行い、アバターを作成。そのデータを基に自動で型紙(パターン)を生成し、より精度の高いパターン製作を実現します。
この技術を開発した理由は、「より美しく、着ていて楽な服を作るため」です。そのためには高度なパターン技術が不可欠であり、船橋は長年、より正確なパターン作りを追求してきました。1980年にローマでサルトリアを開業し、最初に直面したのがパターン補正の難しさでした。オーダーメイドでは、体型の細かな違いを考慮しなければならず、単なる寸法調整では完璧なフィットは得られません。例えば、猫背か反身か、肩の形状、胸や肩甲骨の張り、左右のバランスなど、複雑な要素を全て反映させる必要があります。その困難さに直面し、試行錯誤を重ねました。
あるとき、ローマから南に600km離れた日本人が多く働くターラントで仮縫いを行いました。しかし、パターンの補正に自信が持てず、再び600kmの道を戻ることに。その後、日本大使館の大使のスーツを仕立てる機会を得たものの、体型の特徴を記憶できず再訪する失敗も経験しました。こうした試練を経て、人の手だけでは限界があると痛感しました。
2000年代に入り、CADや3Dスキャン技術が登場し、船橋はこれをフィッティングに活用できると考え、研究を開始しました。スマートフォンの人体スキャンにも挑戦しましたが、精度の問題で断念。しかし2010年代後半、民間向けの高精度ボディスキャナーが登場し、3Dスキャナーを用いたパターン製作の開発に本格的に取り組みました。
課題となったのは、正確なアバターが得られても、即座に理想のパターンが作れるわけではないことです。なぜかというと、先ほど記述したように、人の体型は様々であり、寸法を合わせただけでは正確なパターンが出来ないからです。そこで、寸法だけでなく体の各部分の表面積を活用することでより精度を高められると考え、研究を重ねました。その結果、2025年に入り精度の高いパターン出力が可能となりました。ただし、3D上で正確なパターンが作れても、実際の着心地を検証する必要があります。
現在は3Dスキャンデータを取得し、機械生成のパターンと従来のフィッティングを比較しながら仮縫いパターンを製作しています。今後、機械のパターン精度が十分に高まれば仮縫い不要となり、アバターだけでスーツを仕立てることも可能になるかもしれません。この技術はオーダー服を製作する多くの人に活用してもらいたいと考えています。
かつての若き船橋がこの技術を知ったら、どんな言葉を残したでしょうか…。